Debian ウィークリーニュース - 2006 年 9 月 12 日
Debian コミュニティのための週刊ニュースレター、Debian ウィークリーニュースの今年の第 37 号へようこそ。来週、ドイツのベルリン市で開催される Wizards of OS カンファレンスに、Debian が参加する予定です。André Luiz Rodrigues Ferreira さんは、etch のデスクトップ環境で利用できる特別な Debian テーマがあるのかどうか疑問に思いました。Adrian von Bidder さんは、Debian がインストール済の 16 コア MIPS サーバを発見しました。
APT 鍵のセキュアな管理。 Andreas Barth さんは、7 月から続いてきた APT の鍵管理に関する議論を要約しました。 総括的なアイデアとしては、リリース毎に安定版リリースに署名するためのオフライン鍵と、 一年毎にローテートする不安定版用の鍵を持つことです。 安定版リリース用の鍵は次々世代の安定版 (stable+2) によって無効化されますが、 安定版リリース間のアップデートには古い鍵がそのまま使えます。
Alioth の事故報告。 Raphaël Hertzog さんは、Alioth が IRC プロキシとして悪用されたと報告しました。Alioth チームは多くのプロジェクトが独自にインストールしたウェブアプリケーションを走らせているのを調査で発見し、 それらプロジェクトの管理者に対してインストールされているソフトウェアを調べるよう依頼しました。Raphaël さんはさらに、Alioth のようなサービスはあらゆる人に幅広く利用されているが、 そのオープンさは弱みでもあると付け加えました。
CD/DVD 生成についての報告。 Steve McIntyre さんは、転送時間により生じる遅延を最小限に抑えるために、CD イメージの構築・配布用のサーバを 1 つの場所に移動する計画について報告しました。その他のアイデアとしては、上位 3 アーキテクチャで起動する特製ネットワークインストール CD、自動 CD チェッカー、Google の Summer of Code の一環として行われている Carlos Parra Camargo さんの作業の成果の統合などがあります。
資産の取り扱いに関する憲章改正。 Manoj Srivastava さんは、Debian プロジェクトの資産の取り扱いに関する手続きについての一般決議案への投票を呼び掛けました。投票は、2006 年 9 月 23 日土曜日 23:59:59 UTC までにおこなってください。この決議案は、Debian プロジェクトの資産を取り扱う団体が Software in the Public Interest, Inc. だけではないという事実を反映させるためのものです。
ライセンス問題のために BTS を利用。 Anthony Towns さんは、 ライセンス問題のためにパッケージが配布に適さないと主張するバグ報告のために、 ライセンス用の特別なタグをバグ追跡システム (BTS) に導入してはどうか、と提案しました。Don Armstrong さんが、 一般的にはユーザタグから始めるのがよいだろう、と述べました。このタグを使って debian-legal メーリングリストにバグ報告が転送されるようになるとよいかもしれません。
インターネットスーパーサーバの状況。
Roger Leigh さんは、etch
における inetd
の状況を調査しました。inetd のうち 4 種類が IPv6
プロトコルをサポートしていますが、その一部は標準 BSD
インターネットスーパーサーバの交換用の部品と見なすことができません。Roger
さんは、ユーザが woody や sarge から etch にアップグレードする場合は openbsd-inetd
への切り換えは行われないが、新規にインストールすると openbsd-inetd
をデフォルトで使用するようになる、と補足しました。
コロンビア初の Mini DebConf。 Alejandro Ríos Peña さんは、8 月 19 日 と 20 日に行われた、 コロンビア初の Mini DebConf について報告しました。国中から 14 人の熱心な Debian ファンが参加し、 キーサインパーティが開催されました。 コロンビアの Debian コミュニティはちょうど動き始めたところで、一般的な Debian のタスクやパッケージのメンテナンスに関する勉強会が開かれました。
安定版リリースのアップデート。 Martin Zobel-Helas さんは、安定版 (stable) リリースマネージャミーティングのまとめを出し、 次回の安定版アップデートの予定を 10 月中旬に決定しました。 新しいカーネルパッケージが用意されている模様です。 前回のアップデート時に削除し忘れたパッケージがいくつかあります。 まだ、セキュリティサーバからアップロードされていないファイルもあります。Anthony Towns さんは、旧安定版 (oldstable, woody) ディストリビューションのアップデートも可能にするために、 アーカイブソフトウェアをアップデートすることに同意しました。
Firefox と SeaMonkey。 Mike Hommey さんは、experimental の新しい Firefox 2.0b2 をテストして欲しいと呼びかけました。さらに、SeaMonkey についての作業も始まりました。開発者チームは、etch に向けて全機能を盛り込んだパッケージを提供したいと思っているので、sarge で Mozilla を使っているユーザには、適切なアップグレードパスが用意されるでしょう。 彼はまた、xulrunner の新しいリリースもアップロードしました。このリリースでは、管理者が Mozilla 製品の証明書データベースを取り扱えるようになっています。
セキュリティ上の更新。 いつもの手順はご存知でしょう。 もしこれらのパッケージがひとつでもインストールされていたら、 システムを更新してください。
- DSA 1170: gcc-3.4 — ディレクトリトラバーサル脆弱性。
- DSA 1171: ethereal — 複数の脆弱性。
- DSA 1172: bind9 — サービス不能 (DoS) 攻撃。
- DSA 1173: openssl — RSA 署名フォージェリによる暗号の強度の低下。
新規または注目すべきパッケージ。 以下のパッケージは、最近、不安定版 (unstable) の Debian アーカイブに追加されたか、 または重要な更新を含んでいます。
- aria2 — 高速ダウンロード用ユーティリティ。
- firefox-sage — Firefox 用の軽快な RSS および Atom フィードリーダ。
- gdrae — Real Academia Espanola 辞書用インターフェイス。
- gpscorrelate — デジタル写真と EXIF フィールド内の GPS データとを相関化。
- gstm — GNOME 用 SSH トンネルマネージャ。
- hugin — 複数の画像からパノラマを作成するための Panorama Tools 用 GUI。
- icecc — 分散型コンパイラ (クライアントとサーバ)。
- kphotoalbum — キーワードで画像をインデックス化、検索、閲覧するための KDE 用ツール。
- list — Linux 統計クライアント。
- midish — シェルに似た MIDI シーケンサ兼フィルタ。
- mpop — POP3 用メール取得プログラム。
- msntp — UNIX 用のきわめてシンプルで移植性の高い SNTP クライアント & サーバ。
- obexfs — ObexFTP 対応デバイスのファイルシステムをマウント。
- om — リアルタイムなモジュール式シンセサイザ兼エフェクトプロセッサ。
- openguides — 共同執筆による都市ガイドの管理用ウェブアプリケーション。
- photoprint — 画像印刷ユーティリティ。
- queuegraph — Postfix のキュー統計用 RRDtool フロントエンド。
- stealth — ファイルの正当性を内密にチェック。
- vcf — LADSPA 用のオーディオ EQ 双 2 次フィルタ。
- wodim — コマンドライン版 CD 書き込みツール。
- wsjt — 弱信号下でのアマチュア無線通信。
みなしご化されたパッケージ。
今週 2 個のパッケージがみなしご化され、新しいメンテナを必要としています。
これでみなしご化されたパッケージは合計 316 個となりました。
フリーソフトウェアコミュニティに貢献した以前のメンテナ達に感謝します。
完全なリストが、WNPP
のページにあります。もしパッケージを引き取るつもりがあるなら、
バグレポートに一言付け加えて、タイトルを ITA: に変更してください。
あなたのシステムでインストールされているソフトウェアのうち、
どれがみなしごになっているのかというのを調べるためには、devscripts
の wnpp-alert
プログラムを使うのが便利でしょう。
- convertfs — インプレースのファイルシステム変換ツール。 (Bug#386967)
- obconf — Openbox の設定マネージャ。 (Bug#385988)
削除されたパッケージ。 この 1 週間で、Debian アーカイブから 11 個のパッケージが削除されました。
- cdrtools — コマンドラインの CD 書き込みツール
Bug#377109: メンテナからの依頼、non-free、ライセンスの問題。 - bonobo-conf — Bonobo の設定システム
Bug#252828: QA からの依頼、古い、このパッケージへの依存がない、開発元に放棄されている。 - hanterm-classic — ハングルをサポートした X ターミナルエミュレータ
Bug#290921: QA からの依頼、長期間みなしご化されている、ユーザが非常に少ない。 - povray-3.5 — レイトレーシングプログラム (3D レンダラー)
Bug#294495: メンテナからの依頼、povray で代替。 - scoop — ウェブベースの協同メディアアプリケーション
Bug#301754: QA からの依頼、ユーザが非常に少ない、古い、みなしご化されている。 - x-symbol — XEmacs 用の WYSIWYG な TeX モード
Bug#348060: QA からの依頼、みなしご化されている、RC バグあり、開発元が活動していない。 - blackbook — GTK+ のアドレス帳アプレット
Bug#352437: QA からの依頼、みなしご化されている、ユーザが非常に少ない、開発元に放棄されている、多くの代替あり。 - cpanel — 中国語デスクトップ環境の設定ツール
Bug#352557: QA からの依頼、古い、みなしご化されている、ユーザが非常に少ない。 - arla — AFS 分散ネットワークファイルシステムのフリーなクライアント
Bug#358482: QA からの依頼、みなしご化されている、RC バグあり、OpenAFS で代替。 - thai-system — X11 のタイ語環境用メタパッケージ
Bug#362490: QA からの依頼、インストール不能、みなしご化されている、ユーザがいない。 - mxv — 信号処理と解析を備えた wave ファイルエディタ
Bug#364092: QA からの依頼、古い、バグあり、メンテナがおそらく MIA。
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今週号の Debian ウィークリーニュースは Martin Zobel-Helas and Martin 'Joey' Schulze が編集しました。
今井 伸広, 小林 儀匡 and 田村 一平 が翻訳しました。