Debian プロジェクトニュース - 2011 年 3 月 14 日
今年 4 号目の DPN、debian コミュニティの会報、にようこそ。 この号で取り上げられている話題は:
- Debian プロジェクトが CeBIT で表彰
- Debian は最重要の GNU/Linux ディストリビューションである
- CeBIT 2011 のレポート
- Debian プロジェクトリーダーからの一言
- ハッピーバースデー FSFE!
- 次期 Debian プロジェクトリーダー選挙
- 地域別ミラー選択をデフォルトに
- Cupt の新バージョンがお目見え
- ARM と組み込み移植版スプリントの報告
- Debian バグ管理システム用の追加グラフ
今週の Debian
インタビュー続報- その他のニュース
- Debian の新しい協力者たち
- 重要な Debian セキュリティ勧告
- 新規の注目パッケージ
- 作業が必要なパッケージ
- これからも DPN を読みたいですか?
Debian プロジェクトが CeBIT で表彰
Debian プロジェクトがドイツのハノーバーで開催された CeBIT
カンファレンスで 2
つの分野における Linux New Media 賞を受けました。Debian
は技術的分野と、フリーソフトウェア定義やフリーソフトウェア化手順の
両方における先駆的な活動
によって
最高のオープンソースサーバディストリビューション
に選ばれただけでなく、
Debian はオープンソース、Linux、フリーソフトウェアへの
極めて大きな貢献による
名誉ある賞を、この表彰のために格好いい Debian
ネクタイを身につけた欧州フリーソフトウェア財団代表の Karsten Gerloff
さんから受けました。
この賞が重要な理由 (審査団は無記名投票によって選ばれた 300 以上の FLOSS コミュニティのメンバー、開発者、ジャーナリスト、企業からなるため) を短く説明したKarsten Gerloff さんによるスピーチの全文が入手可能です。 この賞は単独の組織からの賞ではなく、 フリーソフトウェアコミュニティ全体の代表者からの賞です!
Debian は最重要の GNU/Linux ディストリビューションである
IT ジャーナリストである Bruce Byfield さんはDebian の市場占有率
と影響力の詳細な分析記事を発表しました。
さらに彼は、様々なデータ (例えば、活動している Debian 派生物の数。DistroWatch
によれば、活動しているディストリビューションの 63 %
が直接的あるいは間接的に Debian を基礎としています。) を収集し、Debian
とその派生物の得意分野をいくつか挙げました。彼の結論によれば、
どんな分野においても、少なくとも 1 つ以上の Debian か Ubuntu
の派生物がその分野専用に開発されていると考えることは完全には正しくありませんが、
あながち間違いでもないのです
。この点は Debian は最重要の Linux である
と言うタイトルでスラッシュドットでも言及されました。
CeBIT 2011 のレポート
Alexander Reichle-Schmehl さんは今年の CeBIT のレポートを送信しました。CeBIT では Debian を代表して彼と他の
Debian 貢献者たちが Univention 社のブースに参加しました。
Univention 社とは Debian を基にした製品を開発している企業です。
3 日間に約 200 人の人々が Debian ブースを訪れ、多くの人々は Debian
プロジェクトを手伝う方法や プロジェクトに参加する方法を尋ねるか、
例えば、LibreOffice に対する Debian
の立場やプロジェクトの内部構造と管理方法等のより具体的な質問をしました。
また、Squeeze
のリリース、新しいウェブサイトのレイアウト、新しい
spacefun テーマなどに対する感謝の気持ちを表すためだけに
ブースを訪れた人も多かったです。このブースでは技術プレビューを目的とした
Debian GNU/kFreeBSD ボックスがお披露目され、訪れた人々の興味を引いていました。
Alexander さんは我々のスポンサーである Univention 社と
Deutsche Messe AG 社だけでなく、ブースの運営を手伝ってくれた
Debian の仲間たちにも感謝の意を示しました。
Debian プロジェクトリーダーからの一言
Debian プロジェクトリーダーである Stefano Zacchiroli さんは Squeeze
リリースの影響について述べた電子メールを送信しました。
彼がメールで述べた重要なポイントの一つは Debian
とフリーソフトウェア財団による議論です。この議論で、
共にフリーソフトウェアの開発を行っている 2
つのプロジェクトの活動方針の違いが述べられました。
Stefano さんはまた、Squeeze
リリースに関するいくつかの場所で行われた多くのインタビューを挙げました。
この電子メールの中には彼が行ったトークへのいくつかのリンクがあり、
彼がとても忙しかったことは明らかです。
ハッピーバースデー FSFE!
欧州フリーソフトウェア財団 (FSFE) は 10 回目の誕生日を迎えました! おめでとう! この大事な日を記念して、FSFE の歴史における一大イベントを盛大にお祝いすることが企画されました。
次期 Debian プロジェクトリーダー選挙
Debian プロジェクト秘書である Kurt Roeckx さんは今年の Debian プロジェクトリーダー選挙の日程を発表しました。推薦期間は 3 月 11 日金曜日で終了しました。現在の Debian プロジェクトリーダーである Stefano Zacchiroli さんは再度立候補する予定です。3 月 12 日の土曜日から 4 月 1 日の間に候補者は選挙活動と議論を行い、続いて 2011 年 4 月 2 日の土曜日から 2011 年 4 月 15 日の金曜日までが実際の投票期間となっています。
地域別ミラー選択をデフォルトに
新規インストール時にある種の地域別ミラーを使用することが debian-boot メーリングリストで話題になり、その後により一般向けの debian-devel メーリングリストでも話題になりました。 DNSSEC を使った場合の問題、apt-spy や netselect-apt を使う (DNS を使う) 方法に対する様々な賛否が議論されました。 APT 開発者である Michael Vogt さんはいくつかのヒントを投稿しました。 この中で彼は、同様の問題を解決するために apt に追加された 役立つ機能を使うことで、一般の deb mirrors:// ラインを apt ソースとして設定できることに言及しました。サーバ側の対応を除けば、この機能は既に使える状態になっています。
Cupt の新バージョンがお目見え
Eugene Lyubimkin さんは dpkg パッケージマネージャの代替フロントエンドである Cupt の次期リリースに関してブログを書きました。 最も注目すべき機能は、ユーザからの要求を満足する解決策が無かった場合、Cupt はエラーメッセージを表示するだけでなく、 依存関係が解決できなかった理由も表示するようになった点です。
ARM と組み込み移植版スプリントの報告
Debian スプリントの間、ARM と組み込み移植版の Debian チームはケンブリッジにある ARM のオフィスで顔を合わせる機会に恵まれました。 このとき、ARM と組み込み環境に対して多くのことがなされました。現在、 最近のネットブック、タブレット、スマートフォンで使われている最新の ARM チップ (v7) に適した、より効率的なユーザランドを提供する新しい Debian 移植版 (armhf) をビルドするための努力が続けられています。
multiarch
のサポートに関して多くの改良がなされました。
これにより、別のユーザランドに含まれるライブラリをクロスインストールすることが可能になる予定です。例えば、i386 の
non-free に含まれるフラッシュのようなものを amd64 システム上で使えるようになります。クロスビルドサポートは Debian
自体に組み込まれているため、開発者は、Debian が動く ARM
デバイス上で走るアプリケーションを、デスクトップ上でより簡単に開発することができるようになります。
Eben Moglen さんが唱えた、家庭用に自由を提供する為の小さく、 安価で、単純なコンピュータという視点に触発され、開発チームはクラウドが 提供する中心型サービスの置き換えに役立つ様々なアプリケーションが走る Debian ベースのプラットフォームをビルドしています。FreedomBox の目的とは、プライバシー、管理、使いやすさ、非中央集権化です。
Debian バグ管理システム用の追加グラフ
Mike Hommey さんはDebian のバグ管理システムのグラフに新しい機能を追加しました。 パッケージ毎のグラフに加えて、 一枚に複数のパッケージのデータを載せたグラフと、 メンテナ毎のグラフが利用可能です。
今週の Debian
インタビュー続報
前号の Debian プロジェクトニュース以降、今週の Debian
ポッドキャストが 3 回分新たに公開されました。Debian
プロジェクトリーダーである Stefano Zacchiroli さん、Project Cauã に関してJon Maddog
Hall さん、ボスニアでの Debconf 2011に関して Adnan Hodzic さんへのインタビューです。
Debian を陰で支える人
インタビューが 1
回分公開されました。翻訳コーディネータである Christian Perrier さんへのインタビューです。
その他のニュース
開発ニュース寄せ集めの第 26 号が発行され、以下の話題が取り上げられました。
- DebConf ニュース
- Multiarch サポート
- ミラーネットワークから win32-loader.exe が利用可能に
- チーム限定の新規メンテナからの質問
- Debian ゲームチーム会議
Yves-Alexis Perez さんはXfce 4.8
に関する最新の情報を報告しました。彼はデスクトップ環境の新しい
アップストリームリリースであるこのパッケージを Debian の
experimental
ブランチにアップロードしました。現在、
彼はリリースチームと同期作業をしており、可能になり次第
Debian 不安定版
ブランチへのアップロードを行う予定です。
Cyril Brulebois さんは Debian XSF
ニュース
の第 7 号を発表しました。彼は Debian の X.org
パッケージに関連する出来事をいくつか挙げ、最後に以下のように
素晴らしい成果を述べました。X.org
に関連したパッケージの公開バグレポートの数は 11 月の 880
個から、現在 540 個まで減りました。
Holger Levsen さん、Moray Allan さん、Gunnar Wolf さんが DebConf 議長
に選出されました。
年次 Debian 会議の編成は変わりませんが、彼ら 3 人は今後 Debian
プロジェクトと DebConf プロジェクト間の連絡係になる予定です。
FTP マスターである Jörg Jaspert さんは
3 月 21 日から 27 日にドイツのエッセンにある LinuxHotel で次回の
FTP チーム会議を開催することを発表しました。
この中で彼は、現在挙がっている会議の議題
(buildd による自動サイン
のような内部向けのものから
data.debian.org のようなエンドユーザ向けのサービスまで)
を発表しました。
Tollef Fog Heen さんは /etc/default にあるサービスの設定スニペットを使って サービスを有効化したり無効したりするフラグの命名を一致させると便利なのではないかと提案しました。これに対してある人は、 ランレベルをカスタマイズするのにはもっと適したツールがある、 と返信しました。また、insserv の導入によってインターフェイスが複雑になったということも指摘されました。
Debian の新しい協力者たち
前回の Debian プロジェクトニュースから後に、1 人の応募者が Debian 開発者として認められ、5 人の応募者が Debian メンテナとして認められ、4 人の方々がパッケージのメンテナンスを始めました。 Frédéric-Emmanuel Picca さん、Stephen Kitt さん、 Higuchi Daisuke さん、Alberto Garcia さん、Sergey B Kirpichev さん、 Roland Dreier さん、Miguel Colonn さん、Pietro Monteiro さん、 Boris Dušek さん、Mahyuddin Susanto さんを私たちのプロジェクトに歓迎しましょう!
重要な Debian セキュリティ勧告
Debian セキュリティチームは最近、以下のパッケージ (抜粋) にセキュリティ勧告を公開しました: samba、 cups、 pywebdav、 pango1.0、 dtc、 iceape、 subversion、 logwatch、 nbd、 isc-dhcp、 proftp-dfsg、 iceweasel、 icedove、 webkit、 chromium-browser、 wordpress。 勧告の内容をよく読んで、適切な対策を講じてください。
Debian 安定版リリースチームはこれらのパッケージの更新をアナウンスしました: clive、 tzdata。 内容をよく読んで、適切な評価をしてください。
Debian Volatile チームはこのパッケージの更新をアナウンスしました: tzdata、 clamav。 内容をよく読んで、適切な評価をしてください。
これらは、先週のセキュリティ勧告の中からより重要なものだけが抜粋されていることに注意してください。Debian
セキュリティチームが公開したセキュリティ勧告の最新情報をチェックする必要があるなら、アナウンスを受けとるためにセキュリティメーリングリスト (これとは別に backports セクションのメーリングリストと stable-updates セクションのメーリングリストあるいは旧安定版である Lenny
向けの volatile セクションのメーリングリスト) を購読してください。
新規の注目パッケージ
最近、以下のパッケージが不安定版の Debian アーカイブに追加されました。新規パッケージからの抜粋:
- banshee-extension-ampache — Banshee 用 Ampache 拡張
- banshee-extension-clutterflow — Banshee 用 CoverFlow 機能
- banshee-extension-jamendo — Banshee 用 Jamendo 拡張
- banshee-extension-lastfmfingerprint — Banshee 用 Last.FM fingerprinting 拡張
- banshee-extension-openvp — Banshee 用可視化拡張
- banshee-extension-randombylastfm — Banshee 用 Last.FM を用いたランダム化拡張
- banshee-extension-zeitgeistdataprovider — Banshee 用 Zeitgeist データ提供拡張
- classads — Condor 用 classad ユーティリティ
- comixcursors-lefthanded — 漫画的 X11 用マウスポインタテーマ (左利き用、半透明)
- comixcursors-lefthanded-opaque — 漫画的 X11 用マウスポインタテーマ (左利き用、不透明)
- comixcursors-righthanded — 漫画的 X11 用マウスポインタテーマ (右利き用、半透明)
- comixcursors-righthanded-opaque — 漫画的 X11 用マウスポインタテーマ (右利き用、不透明)
- cpm — PGP 暗号化を用いた curses ベースのパスワードマネージャ
- doxygen-latex — C言語、C++、Java、Python、その他のプログラミング言語用ドキュメンテーションシステム
- drupal6-mod-views-charts — Drupal 6 用 views_charts モジュール
- drupal6-mod-views-groupby — Drupal 6 用 views_groupby モジュール
- eq10q — LV2 イコライザ
- failmalloc — メモリ割り当て失敗によるクラッシュ試験ツール
- git-el — 高速で拡張性のある分散型バージョン管理システム (Emacs サポート)
- grub-imageboot — GRUB 2 と Syslinux MEMDISK を用いた ISO と フロッピーイメージのブート
- gscanbus — IEEE1394 (FireWire/i.Link) バスのスキャン
- ibus-sunpinyin — IBus 用 SunPinyin エンジン
- kdesrc-build — ソースリポジトリから KDE をビルドするツール
- live-config-systemd — Debian Live - システム設定スクリプト集 (systemd バックエンド)
- live-tools — Debian Live - システムサポートスクリプト集
- miniupnpc — 軽量ライブラリを使った UPnP IGD クライアント
- nagircbot — Nagios の状態を告知する IRC ボット
- pd-hcs — UNIX における Pd 実験ライブラリ、Pd GUI、その他
- python2.7 — 対話式高レベルオブジェクト指向言語 (バージョン 2.7)
- qt-assistant-compat — Qt アシスタント互換バイナリ (レガシー)
- qt4-qmlviewer — Qt 4 QML ビューア
- qtmobility-examples — Qt Mobility の例
- ranger — Python で書かれた ncurses フロントエンドのファイルマネージャ
- rgbpaint — 単純なピクセルベースのペイントプログラム
- rhythmbox-ampache — Ampache サーバからの音声ストリームを再生
- scim-sunpinyin — SCIM 用 SunPinyin エンジン
- servicefw — Qt Mobility サービスフレームワークツール
- sunpinyin-utils — Sun の提供する簡体中文入力メソッド (ユーティリティ)
- termit — VTE ライブラリに基づく簡単な仮想端末、組み込み Lua
- tryton-proteus — Tryton アプリケーションプラットフォーム (Proteus)
- xsunpinyin — SunPinyin 用スタンドアロン型 XIM サーバ
- xul-ext-firetray — thunderbird や firefox をアプリケーションのように使うシステムトレイ拡張
- xul-ext-ubiquity — 自然言語入力に基づくブラウザインターフェイス
作業が必要なパッケージ
現在のところ、 329 のパッケージからメンテナがいなくなり、 144 のパッケージが後継メンテナ募集状態になりました。完全なリストは支援が必要なパッケージにあります。
これからも DPN を読みたいですか?
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今週号の Debian プロジェクトニュースは Hector Oron, Francesca Ciceri, Jeremiah C. Foster and Alexander Reichle-Schmehl が編集しました。