第1章 定義と概要

目次

1.1. この FAQ は何?
1.2. Debian GNU/Linux とは何?
1.3. これで Debian が何なのかはわかった。。。では Linux とは何?
1.4. Debian は GNU/Linux だけ?
1.5. Debian GNU/Linux と他の Linux ディストリビューションの違いは何? 他のディストリビューションよりも Debian を選択すべき理由は?
1.6. Debian プロジェクトは Free Software Foundation の GNU プロジェクトにとってどういう存在?
1.7. Debian の発音とその意味は何?

1.1. この FAQ は何?

この文書は Debian ディストリビューション (Debian GNU/Linux その他) や Debian プロジェクトについてよく聞かれる疑問 (その回答も!) を集めています。他の文書へのポインタで済ませることができるものについてはそのようにしています: この文書に外部文書から大々的に引用することはしません。Unix 類似オペレーティングシステムについてのいくらかの知識を前提としている回答があることがわかるでしょう。前提とする予備知識はできるだけ少なく済むように努めます: 初心者一般の疑問に対する回答は簡単なものにしています。

探しているものがこの FAQ から見つけられない場合は 「Debian システム上の、あるいは Debian システム用の文書は他にどんなものがありますか?」 を確認してください。それでもわからないときは 「意見」 を参照してください。

1.2. Debian GNU/Linux とは何?

Debian GNU/Linux は独特の Linux オペレーティングシステムディストリビューションですが、その上で動作する多数のパッケージを指すこともあります。

Debian GNU/Linux は:

  • 機能満載: Debian には現在 59100 超のソフトウェアパッケージが収録されています。どのパッケージをインストールかはユーザが選択できます。この目的のためのツールを Debian は提供しています。現在 Debian で利用可能なパッケージの一覧や説明は任意の Debian ミラーサイトで探せます。

  • 利用や再配布を自由にできます: ディストリビューションに首を突っ込んだり開発するために協会の会員資格や支払いを要求することはありません。正式に Debian GNU/Linux の一部であるパッケージは全て、通常は GPL (GNU General Public License) により指定される条件の下で自由に再配布できます。

    The Debian archives also carry approximately 1000 software packages (in the non-free and contrib sections), which are distributable under specific terms included with each package.

  • dynamic: With about 1012 volunteers constantly contributing new and improved code, Debian is evolving rapidly. The archives are updated twice every day.

ほとんどの Linux ユーザは例えば Debian GNU/Linux のような Linux の特定のディストリビューションを使っています。建前としては、ユーザはインターネットや他のどこかから Linux カーネルを取得して自分でコンパイルすることができます。それから同じ方法で多数のアプリケーションのソースコードを取得してプログラムをコンパイルし、システムにインストールします。複雑なプログラムではこのプロセスは時間がかかるだけでなくエラーを起こしやすいことがあります。それを避けるため、オペレーティングシステムやアプリケーションパッケージを Linux 配布者から取得することを選択するユーザが多くいます。様々な Linux 配布者を特徴づけるものはパッケージ化やインストール、ユーザのシステム上のアプリケーションパッケージ追跡に使うソフトウェアや手順、方法と、インストールや保守のために利用するツールや文書その他のサービスの調和です。

Debian GNU/Linux はフリーで高品質な Unix 互換オペレーティングシステムを作る有志による取り組みの成果で、アプリケーション一式を備えています。フリーの Unix 類似システムという構想は GNU プロジェクトが起源で、Debian GNU/Linux をとても有用なものにする多数のアプリケーションは GNU プロジェクトにより開発されました。

Debian ではフリーには GNU での意味があります (Debian フリーソフトウェアガイドライン (DFSG) 参照)。私達がフリーソフトウェアについて話すときには、自由のことを指し、価格のことではありません。フリーソフトウェアとは、フリーソフトウェアの複製を配布する自由があること、ソースコードを受け取っているか望めば取得できること、ソフトウェアを変更できること、新しいフリーのプログラムで利用できること、そしてこういったことができるということをわかっていることを意味します。

Debian プロジェクトは Ian Murdock さんによって 1993 年に創設され、初期は FSF の GNU プロジェクトによる支援を受けました。現在では、GNU プロジェクトの直系の子孫プロジェクトだと Debian の開発者は考えています。

Debian GNU/Linux 自体はフリーソフトウェアですが、付加価値のある Linux ディストリビューションを作るための土台にもなります。信頼性の高い機能満載の基礎システムを提供することで Debian は Linux ユーザに更なる互換性を提供し、Linux ディストリビューションの作成者は手間の繰り返しを廃してディストリビューションを特別なものにすることに注力できます。さらなる情報については、「「特定用途」向けの特別な Linux ディストリビューションを作成しています。この Linux システムの中核に Debian GNU/Linux を使ってその上に自分のアプリケーションを追加することはできますか?」 を見てください。

1.3. これで Debian が何なのかはわかった。。。では Linux とは何?

一言で言えば Linux は Unix 類似オペレーティングシステムのカーネルです。元々は 386 (以上) の PC 向けに設計されました。現在では Linux は他の多くのシステムでも動作します。Linux は Linus Torvalds および世界中の多数のコンピュータ科学者により書かれました。

カーネル以外に、「Linux」システムには通常、

  • Linux Filesystem Hierarchy Standard https://www.pathname.com/fhs 準拠のファイルシステム。

  • その多くが GNU プロジェクトや Free Software Foundation により開発されている広範な Unix ユーティリティ。

があります。Linux カーネルやこのファイルシステム、GNU や FSF によるユーティリティ、それ以外のユーティリティを組み合わせることで POSIX (IEEE 1003.1) 標準への準拠を実現しています。「Debian と他の Unix システムではどのくらいソースコードの互換性がありますか?」 を見てください。

Linux のさらなる情報については、Linux Online による What is Linux を見てください。

1.4. Debian は GNU/Linux だけ?

現在 Debian は Linux のみが利用可能ですが、Debian GNU/Hurd 及び BSD カーネル上の Debian から、開発、サーバ、デスクトップ基盤用に Linux ベースではない OS の提供も開始しました。

最初に移植に取りかかったのは Debian GNU/Hurd でした。

Hurd は GNU Mach マイクロカーネル上で動作するサーバ群です。GNU オペレーティングシステムの基礎を構成します。

GNU/Hurd 全般のさらなる情報については https://www.gnu.org/software/hurd、Debian GNU/Hurd のさらなる情報については https://www.debian.org/ports/hurd/ を見てください。

次に取りかかったのは BSD カーネルへの移植でした。FreeBSD のカーネルについて作業しています。

こういった linux 以外への移植版のさらなる情報については https://www.debian.org/ports/#nonlinux を見てください。

1.5. Debian GNU/Linux と他の Linux ディストリビューションの違いは何? 他のディストリビューションよりも Debian を選択すべき理由は?

他の Linux ディストリビューションと Debian の違いを特徴づける重要な特色は:

自由:

Debian 社会契約で述べられているように、Debian は 100% フリーを維持します。Debian は真にフリーであるソフトウェアを提供するということについて非常に厳格です。作業が「フリー」なのか判断するためのガイドラインは Debian フリーソフトウェアガイドライン (DFSG)で提供されています。

Debian パッケージ保守システム:

システム全体やその中の個々の構成要素は再構成の必要なく適切にアップグレード可能で、独自の設定ファイルを失うことや (ほとんどの場合) システムを再起動する必要はありません。現在の Linux ディストリビューションはほとんどがある種のパッケージ保守システムを利用可能です。Debian のパッケージ保守システムはその堅牢性に特化し、また差別化を図っています (7章Debian パッケージ管理システムの基礎 参照)。

開かれた開発:

他の多くの Linux ディストリビューションが個人や小規模な内輪の集団、あるいは商用ベンダーにより開発されているのに対し、Debian はフリーのオペレーティングシステムを作成するという共通の利害を持つ多くの個人の集まりにより開発されている主要 Linux ディストリビューションの一つです。これは Linux その他のフリーソフトウェアと同一の精神によるものです。

1012 人以上の有志であるパッケージメンテナが 59100 以上のパッケージについて作業し、Debian GNU/Linux を改善しています。Debian の開発者のプロジェクトへの貢献は (ほとんどの場合) 新しいアプリケーションを作成することだけではなく、既存のソフトウェアをパッケージにしたり、プロジェクトの標準に従って上流の開発者とやりとりしてバグを報告したり、ユーザへのサポートを提供することによっても行われます。貢献者になる方法に関する追加情報は 13章Debian プロジェクトへの寄付 を見てください。

ユニバーサルオペレーティングシステム:

Debian には 59100 以上のパッケージが付属し、9 のアーキテクチャで動作します。これは他のどの GNU/Linux ディストリビューションで利用可能なものをもはるかにしのぐものとなっています。提供されているソフトウェアの概要については 「Debian GNU/Linux ではどんな種類のアプリケーションや開発用ソフトウェアが利用できますか?」、サポートしているハードウェア基盤の説明については 「Debian GNU/Linux はどのハードウェアアーキテクチャ/システムで動作しますか?」 を見てください。

バグ追跡システム

Debian 開発者が地理的に分散していることで、バグについて迅速にやりとりし、バグを修正してシステムの開発を加速するためには、洗練されたツールが必要となります。ユーザはバグを決まった形式で送ることを奨励され、その結果 WWW アーカイブやメール経由で迅速にアクセスできるようになります。この FAQ のバグ記録の管理 「既知のバグのログはありますか?」 にある追加情報を見てください。

Debian ポリシー:

Debian には品質標準を広範囲にわたり説明している Debian ポリシーがあります。この文書では私達が保持する Debian パッケージの品質と標準を定めています。

これについての追加情報は Debian を選ぶ理由にある私達のウェブページを見てください。

1.6. Debian プロジェクトは Free Software Foundation の GNU プロジェクトにとってどういう存在?

Debian システムは Free Software Foundation と特に Richard Stallman により初めて推進されたフリーソフトウェアの理想を土台に作られています。FSF の強力なシステム開発ツールやユーティリティ、アプリケーションもすべて Debian システムの要です。

Debian プロジェクトは FSF とは別個の団体ですが、様々なプロジェクトで定期的に協力しています。FSF は私達のシステムを「Debian GNU/Linux」と呼ぶようにはっきりと要求し、私達はその要求に喜んで従っています。

FSF の長期目標は Hurd をベースにした GNU と呼ばれる、新しいオペレーティングシステムを開発することです。Debian は Debian GNU/Hurd というこのシステムについて FSF とともに作業しています。

1.7. Debian の発音とその意味は何?

プロジェクト名は Deb'-ee-en と発音し、Deb に短い e、最初の音節に強勢があります。この語はプロジェクトを創設した Debra と Ian Murdock という名を短縮したものです。 (辞書では Ian の発音にいくらかあいまいな表現が示されているようですが (!)、Ian は ee'-en を好んでいます)