KDE のコピーライトおよびライセンス問題に関するDebian のスタンス

1998 年 10 月 8 日

KDE [1] や Troll Tech [2] の Qt ライブラリの配布に用いられているさまざまなライセンスについて、 またこれら二つのライセンスの関係については、多くの論争が行なわれてきました。

Debian [3] は、Debian インターネットサイトやオフィシャル CD 経由での KDE バイナリの配布を終了する決定をしましたが、 この文書ではこの決定を招く結果となった状況の側面に焦点を当ててみます。

ただこのことは、 Debian (や他のいずれ) に対してもこれらのバイナリの配布の権利を認めない というさまざまなライセンスとの関係を純粋に扱うものであって、 決して non-free [4]ソフトウェア、 すなわち KDE に対して敵対する試みでないことにはご注意ください。

問題点

  1. Troll Tech の Qt ライブラリは、 あなたはこの告知を含めた全アーカイブを変更を加えずに配布する場合、 Qt フリーエディションのこの版をコピーすることができます。 という条件を含むライセンスに基づき配布されています。
  2. KDE のコードは、GNU 一般公有使用許諾の第二版 [6] にライセンスされています。
  3. 現在 KDE が、利用可能なバイナリを提供するためには Qt をリンクする必要があります。

GPL の条項 2.b. は以下の通りになっています。

あなたが配布したり公開するあらゆる成果物は、 それ全体やその部分を含んだもの、 またその「プログラム」全体や部分から派生したものを含めて、 それ全体を本使用許諾の条項に基づいて、 第三者へ無償で使用許諾しなければなりません。

これによれば、もし GPL に基づく KDE コードを Troll Tech の Qt ライブラリにリンクし配布するならば、それを GPL に基づいて配布しなければなりません。

しかしながら、GPL はこの条件に基づいて配布される全ソースを修正する権利を 認めるよう主張しており、これは明らかに Qt のライセンス条件と衝突します。

GPL の条項 7 は以下の通りになっています。

7. もし .... 他のどんな理由があっても ... あなたに課せられた条件が本使用許諾と矛盾するものであったとしても ... 、 本使用許諾の条件は免除されません。 本使用許諾下の義務と、その他のあらゆる関連義務を同時に果たしたうえで 配布することができない場合、その結果として あなたは「プログラム」を配布することはまったくできなくなります。

そのため、私たちはこのプログラムを配布するという権利を拒んできました。

可能性のある解決方法

  1. ライセンスの変更

    この問題を引き起こした原因がライセンスにあることから、 このライセンスを変更することが解決策の一つです。 ライセンスを以下のように変更すれば、 プログラムの配布上の問題は完全になくなります。

    このプログラムは、Troll Tech の Qt ライブラリをリンクし、 配布することを、Qt に GPL を適用することなしに行なう特別な許可を得た上で、 GNU GPL の第二版に基づいて配布されます。

    この解決方法は Debian (および他の誰でも) による KDE のバイナリ配布を可能にしますが、これは KDE 開発者の実際の意図を反映したものとも言えるでしょう。

    では、誰ならこのような変更を行なえるのでしょうか?

    あるプログラムの配布に関するライセンス条件を変更できるのは、著作権保持者 (たいていの場合は作者) のみです。

    全面的に KDE のコア開発者によって書かれたプログラムの場合、 バイナリの配布を認めるような他のライセンスの利用に同意してもらうのは、 実際のところ少々困難でしょう。

    相当量のコードがより広範なコミュニティによって寄贈された場合や、 サードパーティーの GPL 準拠コードが Qt に移植された場合は、 問題が生じるでしょう。 このことは驚くべきことではありませんが、GPL は GPL 準拠コードの non-free ソフトウェアへの組み込みを妨げる意図をあきらかに持っています。

  2. KDE が non-free ソフトウェアに依存しないようにする

    こちらに至るまでの道筋はいくつかありますが、 その中でもっとも見通しの明るいものが Harmony [7] プロジェクト (Qt に代わる GPL 準拠の実装) です。

    このような方途のいずれかが実現されれば、non-free なコードに依存することなく KDE のバイナリがビルトでき、 それを Debian GNU/Linux のメインディストリビューションに収録することもできるようになります。

    もちろん、これが実現されれば、KDE 開発者は non-free ライブラリの 利用を自制しなければならないでしょう。 また、Harmony で (もうすぐ) 利用できる機能のみを使うように制限することは、 このことに確かに役立つでしょう。

結局何が許可されているのか?

KDE コア開発者によって 100% 書かれたコードに関しては、 それ自身のライセンスを見直し、 彼らが適切と考える形式で KDE バイナリを配布できます[8]。

Qt を標準で採用するオペレーティングシステムに関しては、 GPL の例外となりますが、Qt をリンクして KDE バイナリを配布することは可能です。

もちろん、Qt ライブラリを組み込まないならば、 ライセンスが矛盾するような問題はないので、 そのソースは自由に公表することができます。

結局何が許可されていないのか?

(著作権保持者以外によって) コードに GPL を適用すること、 それにライセンス上矛盾のあるコードをリンクすること、 それから生成されたバイナリを頒布することは、明白に禁じられています

実際のところ、GPL 準拠プログラムの大半には、 たくさんの作者によって寄贈されたパッチが含まれています。 このことは、一人の人がそのプログラムの唯一の著作権保持者であると 主張することが不可能であること、 そのコードを異なるライセンス条件のもとに公表しなければならないことを 意味しています。

KDE バイナリのなかにはサードパーティーによる GPL 準拠コードを相当量含んでいるものがありますが、 それらのコードに関する Qt のリンクおよび配布への承諾は、 得られておらず、認められていません。

結論

  1. 自らの意向を反映したライセンスを選ぶべきです。

    KDE 開発者は GPL の制限すべてを課すことを望んではいません。 そのため GPL を用いるべきではありません。

  2. ソフトウェア配布に関するライセンス条件は尊重されなくてはなりません。

    Debian に関して言えば、このことは現状では KDE による GPL の選択を 尊重し、(GPL の要求に従い) 彼らのバイナリを配布しないことを意味します。

    KDE に関して言えば、このことは他の GPL 利用を尊重し、 その生成物であるバイナリを配布する前に、そのコードを non-free なライブラリとリンクする許可を得なければならないことを意味します。

[1] http://www.kde.org/
[2] http://www.trolltech.com/
[3] https://www.debian.org/
[4] https://www.debian.org/social_contract#guidelines
[5] http://www.troll.no/free-license.html (リンク切れ)
[6] http://www.gnu.org/copyleft/gpl.html
[7] http://harmony.ruhr.de/ (リンク切れ)
[8] Debian 開発者であり KDE 開発者でもある Stephan Kulowは、 Debian パッケージを作成し、それを ftp://ftp.kde.org/pub/kde/stable/latest/distribution/deb/ KDE サイトから配布するという考えを述べています。
[9] そのような OS が存在するのかははっきりしませんが、 これは不和の種となるでしょう。 また、これは Debian フリーソフトウェアガイドライン [4] に準拠していないため、いずれにしても Debian GNU/Linux には収録されていません。
[10] 可能性のある例外は、Qt を標準コンポーネントして収録するオペレーティングシステム向けに KDE バイナリを配布することです。 ただ、 Debian GNU/Linux は明らかにそのようなシステムではなく、 Linux 全体に関しても (RMS を含めて) 多くの人がそのようなシステムではないと言うでしょう。

注: Red Hat も同様に、興味深い結論 http://www.redhat.com/redhat/qtlicense.html [この URL は今では無効です] をくだしています。

Qt は Troll Tech AS の登録商標です。

この文書に関する質問と答えは http://www.uk.debian.org/~phil/KDE-FAQ.html にてご覧いただけます。

Copyright (C)1998 Philip Hands. この文書は GNU 一般公有使用許諾の第二版の条件に従って再配布を行なうことができます。 (もちろんなんらかの修正を行なうことも可能です。)