Debian プロジェクトニュース - 2009 年 2 月 9 日
今年 2 号目の DPN、Debian コミュニティの会報、にようこそ。この号で取り上げられている話題は:
- リリースアップデート
- 2008 年の Debian Summer of Code: 採択プロジェクトの現状
- Debian GNU/Linux 5.0
Lenny
を Thiemoths
Seufer さんに捧げます - Heise Open の実施したオープンソースの調査
- DPL からの一言
- Debian を実行する Google のポータブルデバイス
- パッケージのチームメンテナンスの成功事例
- DDPortfolio サービスが利用可能に
- ポリシーチームからの一言、ボランティア募集
- Debian メーリングリストの統計
- SCaLE 2009 における Debian プロジェクト
- その他のニュース
- 新しいメンテナ
- 重要な Debian セキュリティ勧告
- 新規の注目パッケージ
- 作業が必要なパッケージ
- これからも DPN を読みたいですか?
リリースアップデート
リリースチームを代表して Adeodato Simó さんは Debian GNU/Linux 5.0 Lenny
の次期リリースに関するリリースアップデートを送信しました。Debian
GNU/Linux 5.0 Lenny
は今週末の 2009 年 2 月 14 日にリリースされる予定です。
Lenny 用 debian-installer の 2
番目のリリース候補版が最近公開され、アーカイブはディープフリーズ
されました。ディープフリーズとは、リリースクリティカルバグの修正を行うパッケージ以外は Lenny
に取り込まれないということを意味しています。手伝いをしたい人はリリースクリティカルバグを修正するか、debian-installer
をテストするか、リリースノートを手伝ってください。
最後に Adeodato さんは Lenny-and-a-half
リリースが予定されている点に言及しました。これには最新のハードウェア用に必要なドライバが追加される予定です。
2008 年の Debian Summer of Code: 採択プロジェクトの現状
Obey Arthur Liu さんが今年の Google Summer of Code プロジェクトを振り返って、報告を行いました。このプロジェクトに参加した学生はフリーソフトウェアプロジェクトに関する様々なプログラミング課題に取り組み、Google は学生に給料を支払います (第 1 部、第 2 部、第 2.5 部、第 3 部を御覧ください)。
Debian は 12 個のプロジェクトを採択され、12 個のうち 1 個は個人的理由で残念ながら中止になりました。残りの 11 個のプロジェクトは全てある程度の成功を収めました: すでに利用されているプロジェクトもあれば、完全に利用可能になるまでにまだ時間が必要なプロジェクトもあります。
FOSDEM で Arthur さんは 2009 年の Summer of Code で今年より良い業績を上げる方法を提案し、この提案を実行に移す手助けをすると述べました。
Debian GNU/Linux 5.0 Lenny
を Thiemo
ths
Seufer さんに捧げます
すでに発表されたとおり、Debian プロジェクトは次期リリースである Debian GNU/Linux 5.0 Lenny
を Thiemo
Seufer さんに捧げることを決定しました。Thiemo さんは 2008 年 12 月 26 日に悲劇的な交通事故で亡くなりました。
この目的を達成するために、Christoph Berg さんは特定のテキストファイルへの GPG 署名を求めました。これは全ての署名と共に、ミラーの docs/dedication ディレクトリに配置される予定です。Debian 開発者、メンテナ、翻訳者、その他の分野での貢献者は誰でもこのファイルに署名することができます。
Heise Open の実施したオープンソースの調査
ドイツのオープンソースポータルである Heise Open はドイツ企業におけるオープンソースソフトウェアの利用調査を実施しました。調査には 1,312 の企業が参加しました: 30% が従業員数 10 人以下の企業、51% が小企業から中企業、19% が従業員数 500 人以上の企業でした。
サーバ用途に Debian を利用している企業は 47% で、これは利用されているディストリビューションの中で最も高い割合でした。デスクトップ用途に Debian を利用している企業は 29.9% (従業員数が 500 人以上の企業に限ると 37%) で、これは 2 番目に高い割合でした。全ての調査結果はここ (ドイツ語のみ) から見ることができます。
DPL からの一言
Steve McIntyre さんは DPL からの一言を公開しました。前号の Debian プロジェクトニュースにも取り上げられた一部の話題
(例えば、最近の投票の結果、Lenny
の計画など) の他に、Debian システム管理者チームへの 2 人の追加メンバーの任命
(Luca Filipozzi さんと Stephen Gran さん) などが取り上げられました。Steve さんは Debian システム管理者チームに対する
James Troup さんの長期間にわたる貢献に感謝しました。
さらに Steve さんは Lenny のリリースの後に、体制の明確化や組織の変化などの問題についてコミュニティで議論を行う必要性を指摘しました。議論の進展を追うために Miriam Ruiz さんはウィキページを作成しました。
最後に Steve さんは内部で議論する際に利用される debian-private メーリングリストアーカイブの機密解除について言及しました。debian-private メーリングリストの内容 (の少なくとも一部) の機密扱いを解除することが 3 年前に決定しており、これを行うボランティアが必要です。
Debian を実行する Google のポータブルデバイス
T-Mobile G1 Android 携帯電話に Debian GNU/Linux をインストールする方法の開発に取り組んでいる人たちがいます。(例えば、ここや、ここや、ここを御覧ください)。彼らは完全な Debian OS を G1 Android 携帯電話で実行させることに成功し、さらに携帯電話としての機能 (電話を受けたり掛けたりすること) も失われていません。これはシェルから呼び出される chroot 環境を作成することで実現されました。このため、あらゆる種類の Debian アプリケーションをこのデバイス上で実行することが可能です。
長期間にわたり Debian インストールシステムの開発者である Joey Hess さんは G1 Android 用のインストールシステムを解析して以下の結論を得ました。システムは — 動いてはいるものの — 技術的な洗練さという点では不合格です。なぜなら chroot を設定する正しい方法と考えられる debootstrap を呼び出すのではなく、chroot 環境を含むアーカイブを主に展開しているからです。より一般的に言えば、新しいデバイスで Debian を実行する場合に正しい方法 (d-i を修正し、インストーラチームにこの修正を送り返す) でそれを行う人が半分しかいない点を Joey さんは残念に思っています。
パッケージのチームメンテナンスの成功事例
Gregor Herrmann さんは最近の Debian カンファレンス期間中に行われたパッケージのチームメンテナンスの成功事例に関する非公式セッションについてまとめました。セッションでは以下の話題が議論されました: 別のパッケージチームのメンバーとの共同作業; 様々な作業の流れ、ツール、挑戦の概要; 広く役立つ '成功事例モデル'; 協力のできる領域と相互利益のある仕事の定義。パッケージチームに必要なツールをまとめる目的でウィキページが用意されました。
DDPortfolio サービスが利用可能に
Jan Dittberner さんが DDPortfolio サービスを発表しました。このサービスは他のウェブベース情報サービスからリンクを収集して、特定の Debian メンテナや開発者向けに便利なページを作成することができます。
ポリシーチームからの一言、ボランティア募集
Debian のポリシーチームは Debian パッケージポリシーの 3.8.1 版が準備中で、Lenny のリリース直後にリリースされる予定であると発表しました。これには、12 個のバグ修正と 7 個の標準的な変更が含まれています (言葉遣い、体裁、補完的文書よりはむしろポリシーが規定する要求の変更が重要です)。
しかしながら、一般により多くの人々がポリシーに取り組む必要性があります。例えば、メーリングリストで行われる議論に参加したり、提案の評価を行う必要があります。また、Debian ポリシー文書を DebianDoc-SGML から DocBook フォーマットに変換する作業を手助けしたり、ポリシー要求から一部の情報を簡単に抜粋できるようにするための新しい文書構造を公式的なものにすることが必要なだけでなく、ポリシーチームの完全な代表編集者になるために必要な時間と素養を持ち合わせている Debian 開発者が必要です。
Debian メーリングリストの統計
Andreas Tille さんは Debian のメーリングリストに関する統計 (メーリングリストの用途と貢献者) を作成しました。Andreas
さんは順調な
プロジェクトおよび手助けを必要としているプロジェクト
(例えば、ずっと前から手助けを探している Debian の OpenOffice.org
メンテナなど) を見つけようとしました。
SCaLE 2009 における Debian プロジェクト
Debian プロジェクトは 2009 年 2 月 20 日の金曜日から 2009 年 2 月 22 日の日曜日まで、米国のロサンゼルスで開催される 7 回目の年次 Southern California Linux Expo にブースを出す予定です。より詳しい情報は関連するイベントページをご覧ください。
Gareth J. Greenaway さんは、特別キャンペーンコードを使うことで Debian 開発者とユーザは全てのショーを観ることができる許可証の価格が半額になることを発表しました。
その他のニュース
開発ニュース寄せ集めの第 13 号が発行され、以下の話題が取り上げられました。
- 新しいテスト版 (
Squeeze
) のセキュリティサポートの遅延 - 自分のパッケージを利用している他のディストリビューションを表示する新しい whohas ツール
- python-apt の文書
- sbuild と wanna-build 状態の更新
- カーネルの仮想パッケーzの削除
Jörg Jaspert さんは Mike O'Connor さんがアーカイブチームに加わることを発表しました。Jörg さんはさらにチームには新人が必要で、興味を持った人は幾つかの基準を満足しなければいけないと述べました。
先の DPL で現在のプロジェクト秘書で技術委員会議長でもある Bdale Garbee さんは IT Wire から普通は気付かない Debian プロジェクトの外側にある物事に関する詳しくて非常に興味深いインタビューを受けました。
Debian 開発者である Enrico Zini さんは FSFE からのインタビューに応じ、Debian、FLOSS と Debian における女性、学校での FLOSS、社会集団、その他について語りました。
Lars Steinke さんと Jeremy Malcolm さんが、Debian 開発者になった経緯、現在の関わり、Debian の利用法、Debian プロジェクト以外の興味について説明しました。
J. A. Watson さんは Debian を Alpha マシンにインストールして嬉しい悲鳴を上げました。Debian
は良いサーバ向けディストリビューションとして知られており、Alpha 版とそのインストール説明書があったので、Debian
を選んだのは当然の選択でした。(中略) Debian は 1 時間もせずに起動し、見事に稼働しました。
長期間にわたり深刻だった、xorg-server パッケージに添付される一部の GLX 関連ファイルのライセンスに関するバグが Bdale Garbee さんによってついに閉じられました。問題のあったファイルは Debian フリーソフトウェアガイドライン、SGI フリーライセンス B の 2.0 版に従うフリーライセンスで再ライセンスされました。
Jörg Jaspert さんは新しいアーカイブ署名鍵の作成について発表しました。署名鍵はまだ利用されていませんが、鍵は Lenny に収録するために作られ、Lenny の最初のポイントリリースまたは古い鍵の有効期限が切れる 7 月 1 日のどちらかに使い始められます。
DebConf 主催チームは間もなく 11 回目の年次 Debian カンファレンスの開催地を決定する予定です。現在の候補地はベネズエラ、エクアドルのキト、米国のニューヨーク市またはボストンです。
Daniel Burrows さんは引き続き APT、aptitude、同様のツールの機能を説明する図を作成しました。今回 Daniel さんは APT が利用する様々な状態ファイルに関する図を作成しました。
Ana Beatriz Guerrero Lopez さんは KDE バックポートの現状と将来の計画について報告しました。
新しいメンテナ
Michael Hanke さんと Jan Hauke Rahm さんが Debian メンテナとして認められました。
Michael Hanke さん、Jan Hauke Rahm さんを私たちのプロジェクトに歓迎しましょう!
重要な Debian セキュリティ勧告
Debian セキュリティチームは最近、以下のパッケージ (抜粋) にセキュリティ勧告を公開しました: openssl、 ntp、 bind9、 xulrunner、 amarok、 iceweasel、 git、 shadow、 typo3、 rt2400、 rt2500、 rt2570、 moin。 勧告の内容をよく読んで、適切な対策を講じてください。
これらは、この 2 週間のセキュリティ勧告の中からより重要なものだけが抜粋されていることに注意してください。Debian セキュリティチームが公開したセキュリティ勧告の最新情報をチェックする必要があるなら、アナウンスを受けとるためにセキュリティメーリングリストを購読してください。
新規の注目パッケージ
最近、以下のパッケージが不安定版の Debian アーカイブに追加されました。新規パッケージからの抜粋:
- hardlink — 同じファイルの複数コピーをハードリンクで置き換える
- gksu-polkit — root でコマンドを実行するコマンドラインユーティリティ
- google-gadgets-gst — Google ガジェットの GStreamer モジュール
- google-gadgets-gtk — Google ガジェットの GTK+ 版
- google-gadgets-qt — Google ガジェットの QT4 版
- google-gadgets-xul — Google ガジェットの XULRunner モジュール
- gsmartcontrol — smartctl のグラフィカルユーザインターフェイス
- gtkperf — GTK+ の性能ベンチマーク
- halevt — HAL イベントの一般的ハンドラ
- iw — Linux ワイヤレスデバイスの設定ツール
- jigzo — 子供用の写真パズルゲーム
- linkchecker-gui — ウェブサイトと HTML 文書に含まれるリンク切れを確認 (GUI クライアント)
- maven-debian-helper — Maven で Debian パッケージをビルドする際の支援ツール
- quassel-client — 中核コンポーネントを用いる分散型 IRC クライアント
- r-cran-rjava — GNU R 用の Java に対する低レベルインターフェイス
- sagemath — Python で書かれた数学ソフトウェア
- snakefood — Python の依存関係の可視化
- sockstat — open 状態の接続に関する詳細情報を表示
- sup-mail — タグ付けと高速検索が可能なスレッド型メーラ
- ticgit — Git を使うチケットシステム
- themonospot — 動画ファイルを調べるアプリケーション
- tuxcmd — GTK+ 2 を用いた 2 画面型 (commander スタイル) ファイルマネージャ
本日の Debian パッケージで取り上られているパッケージは atop (ASCII 全画面パフォーマンスモニタ)、iftop (ホストが利用中のネットワーク帯域を表示するツール)、rtpg-www (rtorrent のウェブフロントエンド) です。
作業が必要なパッケージ
現時点で、404 のパッケージがメンテナ不在となり、113 のパッケージがメンテナの引き継ぎを募集中です。興味を惹かれるパッケージがある場合や、支援が必要なパッケージの完全なリストを見るには、最近の報告をご覧ください。
これからも DPN を読みたいですか?
この会報の作成を手伝ってみませんか? 我々は、Debian コミュニティの活動を眺め、何が起きているのかを報告してくれるボランティアのライターを募集しています。貢献に関するページをご覧になって、手助けの具体的な方法をご確認ください。我々はあなたからのメールを debian-publicity@lists.debian.org でお待ちしています。
このニューズレターを電子メールで受け取りたい方は、debian-newsメーリングリストを購読してください。
バックナンバーもご利用いただけます。
今週号の Debian プロジェクトニュースは Moritz Muehlenhoff さん、Andre Felipe Machado さん、Alexander Reichle-Schmehl さん が編集しました。
綾小路 龍之介さん、Nobuyuki Morita さん が翻訳しました。