Debian プロジェクトニュース - 2010 年 5 月 18 日
今年 3 号目の DPN、debian コミュニティの会報、にようこそ。この号で取り上げられている話題は:
- DebConf10 の最新情報
- Squeeze のフリーズ
- Debian と Ubuntu の関係
- Debian のインストールメディアと non-free ファームウェア
- その他のニュース
- 新しい開発者とメンテナ
- 次期リリースに関するリリースクリティカルバグの統計
- 重要な Debian セキュリティ勧告
- 新規の注目パッケージ
- 作業が必要なパッケージ
- これからも DPN を読みたいですか?
DebConf10 の最新情報
DebConf10 への申し込み締め切り日が迫っており、一部の申し込みは締め切りを過ぎています。例えば BoF (Birds of a Feather) 講演の申し込みはすでに締め切られています。一方で DebConf10 に向けてできることはまだたくさん残っています。これには、ボランティア活動、機材の貸し出し、さらにお金の寄付が含まれます。Raphael Geissert さんが自身のブログで述べたように、DebConf10 を開催する費用を負担するために出資者と資金提供者が必要です。
Joey Hess さんも DebConf10
についてブログを書きました。ブログの中で Joey さんは DebConf への参加を援助します
-- 絶対に後悔させません!
と述べています。参加資金援助申し込みの締め切り日は 5 月 15
日で、まだ時間があります。DebConf10 への参加に関する今年の特別資金援助については Joey
さんに連絡を取ってください。
Squeeze のフリーズ
Adam Barratt さんとリリースチームは移行作業の状況、リリースクリティカルバグ、Squeeze
のフリーズスケジュールの更新についてメールを送信しました。手短に言うと、Squeeze
のフリーズ前にやることがあるため、リリースチームが Squeeze のフリーズ時期を見積もることは難しいとのことです。Adam
さんはリリースチームがフリーズ前に必要な修正を明確に把握するために、リリースチームは今月末までに
'トランジションフリーズ' を導入する予定です。自分の移行作業についてまだリリースチームと話し合っていなければ、5
月 21 日までに必ず話し合いを終わらせてください
と述べています。
リリースチームは現在すでに一部のパッケージの移行作業に着手しており、Qt4 や gnome-desktop
などのパッケージの移行作業を完了しました。KDE チームは KDE 4.4 の作業に着手しており、KDE
スイートのできるだけ最新の安定版を目標にしています。Adam さんは次のように述べました:
evince / totem-pl-parser の移行作業が終わりに近づいており、これは Squeeze で GNOME 2.30
が使えるようになることを意味しています。
RC
バググラフでバグの数が減少しているのは素晴らしい事ですが、Squeeze にはまだ約 400 個の RC バグが残されています。一部の
RC バグは不安定版からテスト版へパッケージが移行されるのを待っているものですが、大部分は作業が必要なものです。
DD なら誰でも RC
バグの影響を受けるパッケージを NMU することでこの作業を手伝うことができます。リリースとは皆の努力の賜物であり、自分自身のパッケージに対する
RC バグを無くすだけでは不十分である (これは手始めにはちょうど良いですが) ということを忘れないでください。したがって、もし手助けできるのなら RC バグを 1 つ選んで修正し :-) NMU を行ってください。メンテナが必要に応じて
NMU に対応できるように DELAYED キューにアップロードすることもあります。
Debian と Ubuntu の関係
近頃の Ubuntu 開発者サミットに招かれ、Debian プロジェクトリーダである
Stefano Zacchiroli さんは両者の関係に関する意見と実例を募集しました。募集項目は最も興味深い成功談、大規模な失敗
、Debian
プロジェクト全体から Ubuntu コミュニティへの要求の 3 種類です。後に Stefano さんはスライドへのリンクを投稿しました
(ビデオも利用できます)。スライドに含まれる図には
Ubuntu に含まれる全パッケージのうち約 75% が Debian のパッケージをそのまま
(追加のパッチが無いまま) 利用している点に言及しているものもあります。Stefano さんは後に講演のまとめと受け取った意見を投稿しました。
Debian のインストールメディアと non-free ファームウェア
Debian のカーネルチームはファームウェアファイル (ネットワークカード等の一部のハードウェアが必要なバイナリデータ) を Debian の non-free セクションの別パッケージに移動させました。これを受けて Kurt Roeckx さんはこの方法が特にインストール中の利用上の問題を引き起こすか否か、またインストールメディアはファームウェアファイルを含むべきかどうかについて質問を投げ掛けました。数人が debian インストールシステムは既に、例えば USB メモリ等の別のインストールメディアからの、ファームウェアファイルの読み込みに対応していると指摘しました。しかしながら多くのユーザと使用事例 (例: リモートインストール) にとってこれは複雑でしょう。最終的に Steve Langasek さんは non-free ファームウェアを含まない普通のインストールメディアと使い勝手の良いツールを提供することを提案しました。このツールを使えば配布可能な non-free ファームウェアファイルをインストールメディアイメージに追加することが可能です。
その他のニュース
開発ニュース寄せ集めの第 22 号が発行され、以下の話題が取り上げられました。
- LWN の購読
- ubuntudiff.debian.net
- debian.net の TXT レコード
- Debian システム管理チームが支援を求めています
- PTS を使って Ubuntu のバグをメールで受け取る
mips* 移植版開発者である Andreas Barth さんが mips と mipsel 移植版に関する状況の更新を送信しました。mipsel の状況は飛躍的に改善したのに対して、mips の状況は変化しませんでした。
Debian システム管理者である Martin Zobel-Helas さんが Debian マシン利用ポリシー (DMUP)
の新版を発表しました。新しいポリシーは
2010 年 7 月 4 日から施行されます。DMUP には、Debian 開発者が debian.org
のハードウェアを使ってやってもよいことと、やってはいけないことの基本原則が挙げられています。この変更は
Debian システム管理者と Debian アカウントマネージャの責任の所在を明確にするために必要でした。
Debian 新メンテナフロントデスクの一員である Enrico Zini さんは開発者に向けて新メンテナプロセスへの応募者を適切に支持する方法について注意を喚起しました。支援メッセージは煩雑で長いものでなくてもかまいません。Enrico さんは、支援するのは既に Debian に対して活発に貢献している人だけにするべき点を強調しています。
Debian システム管理者である Peter Palfrader さんは様々なアーキテクチャの移植版開発者向けに提供されている chroot 環境の保守を行うボランティアを歓迎しました。さらに Peter さんは開発者が chroot 環境内にパッケージのインストールを要求する方法の指針を述べました。
Bdale Garbee さんはスポンサー付き LWN 購読についてブログを書きました。HP 社が Debian 開発者と · ごく最近導入されたように · Debian メンテナに対して LWN.net の購読料をスポンサーしています。Bdale さんはまた、現在 571 人の Debian 貢献者がこのサービスを利用している点に言及しました。
Debian システム管理者である Peter Palfrader さんは配布できないパッケージの削除に関するバグレポートを snapshot.debian.org サービスのメンテナにも送るべきかどうか尋ねました。
KDE パッケージメンテナンスチームの Sune Vuorela さんは Debian ではディストリビューション固有のツールが欠けているのではないかと疑問を投げかけました。
Martin Michlmayr さんは SheevaPlug
や QNAP TS-11x/TS-21x 等の Marvell 社製 Kirkwood
システム向けの Debian 5.0 Lenny
のインストールシステムが利用可能になったことを発表しました。
Jan Dittberner さんは UbuntuDiff、piuparts、パッチトラッカーへのリンクを Debian 開発者ポートフォリオサービスに追加しました。
Stefano Zacchiroli さんは複数のデータソースを集約している The Ultimate Debian Database をソフトウェアリポジトリのデータマイニングを行っている科学者に紹介する論文を共著しました。
新しい開発者とメンテナ
前回の Debian プロジェクトニュースが発行された後に、9 人の応募者が Debian 開発者として認められ、2 人の応募者が Debian メンテナとして認められました。 Deepak Tripathi さん、Daniel Nurmi さん、Paul Gevers さん、 Thomas Goirand さん、Pino Toscano さん、Johan Euphrosine さん、Kanru Chen さん、Mikhail Gusarov さん、Obey Arthur Liu さん、Thierry Soloniaina Randrianiriana さん、Ritesh Sarraf さん、 Tommi Vainikainen さん、Thomas Weber さん、Hideki Yamane さん、Serafeim Zanikolas さんを私たちのプロジェクトに歓迎しましょう!
次期リリースに関するリリースクリティカルバグの統計
非公式のリリースクリティカルバグカウンタによれば、次期リリースである
Debian 6.0 Squeeze
には今のところ 370 のリリースクリティカルバグがあります。このうち 72 は
Debian の不安定版
ブランチで修正済みです。残りの 298 のリリースクリティカルバグのうち、37
に対してはパッチが提供され (テストが必要かもしれません)、20 は保留状態です。
これらのバグおよび contrib または non-free 用のパッケージに対するリリースクリティカルバグを除くと、リリースするためには 180 のリリースクリティカルバグの修正が必要です。
重要な Debian セキュリティ勧告
Debian セキュリティチームは最近、以下のパッケージ (抜粋) にセキュリティ勧告を公開しました: mediawiki、iscsitarget、vlc、mplayer、phpgroupware。 勧告の内容をよく読んで、適切な対策を講じてください。
これらは、先週のセキュリティ勧告の中からより重要なものだけが抜粋されていることに注意してください。Debian セキュリティチームが公開したセキュリティ勧告の最新情報をチェックする必要があるなら、アナウンスを受けとるためにセキュリティメーリングリストを購読してください。
新規の注目パッケージ
最近、以下のパッケージが不安定版の Debian アーカイブに追加されました。新規パッケージからの抜粋:
- akonadiconsole — Akonadi 用の管理とデバッグコンソール
- asciio — GTK+2 で ASCII チャートとグラフを動的に生成
- astk — Code_Aster ビルド/コントロールシステムとフロントエンド -- Tcl クライアント
- blogilo — KDE プラットフォームに基づくブログクライアント
- cantor — 数学アプリケーション用のインターフェイス
- chordii — テキストファイル (chordpro フォーマット) を楽譜に変換
- chromium-browser — Chromium ブラウザ
- cmospwd — CMOS から BIOS パスワードを解読
- coffeescript — CoffeeScript 言語のインタプリタとコンパイラ
- dh-autoreconf — autoreconf を呼び出し、ビルド後に後始末をする debhelper アドオン
- ditaa — ASCII ダイアグラムをビットマップフォーマットに変換
- ecm — より高い圧縮率で圧縮するように CD イメージファイルを準備
- eiskaltdcpp — EiskaltDC++ は Direct Connect 用のグラフィカルクライアント
- emerillon — GNOME デスクトップ用の地図ビューア
- etsf-io — ETSF ファイルの確認、結合、読み込みを行うバイナリツール
- fso-specs — freesmartphone.org DBus XML 仕様書 & ドキュメント
- gnome-color-manager — Gnome デスクトップ環境用の色管理統合ソフト
- gnome-icon-theme-extras — GNOME デスクトップアイコンテーマ (追加アイコン集)
- google-mock — C++ mock クラスを書いて利用する Google のフレームワーク
- granatier — ボンバーマンクローン
- iputils-clockdiff — ネットワークで結ばれたコンピュータ間の時間差を計測
- jbig2dec — JBIG2 デコーダライブラリ - ツール
- jedit — プログラマ用のプラグインベースエディタ
- kbluetooth — KDE Bluetooth フレームワーク
- kde-config-cddb — KDE の CDDB 検索設定
- kde-config-cron — プログラムスケジューラフロントエンド
- kde-config-phonon-xine — 高機能な Phonon Xine 設定
- kde-l10n-cavalencia — KDE 用の南カタルーニャ語 (バレンシア語) (ca@valencia) ファイル
- kde-l10n-eo — KDE 用のエスペラント語 (eo) 地域化ファイル
- kde-l10n-id — KDE 用のインドネシア語 (id) 地域化ファイル
- kde-l10n-si — KDE 用のシンハラ語 (si) 地域化ファイル
- kdelibs5-plugins — KDE アプリケーション用のコアプラグイン
- kdevelop-l10n-cavalencia — KDevelop IDE 用の南カタルーニャ語 (バレンシア語) (ca@valencia) ファイル
- kdevelop-l10n-da — KDevelop IDE 用のデンマーク語 (da) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-de — KDevelop IDE 用のドイツ語 (de) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-engb — KDevelop IDE 用のイギリス英語 (en_GB) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-es — KDevelop IDE 用のスペイン語 (es) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-et — KDevelop IDE 用のエストニア語 (et) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-fr — KDevelop IDE 用のフランス語 (fr) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-gl — KDevelop IDE 用のガリシア語 (gl) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-it — KDevelop IDE 用のイタリア語 (it) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-nds — KDevelop IDE 用の低ザクセン語 (nds) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-ptbr — KDevelop IDE 用のブラジルポルトガル語 (pt_BR) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-pt — KDevelop IDE 用のポルトガル語 (pt) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-sv — KDevelop IDE 用のスウェーデン語 (sv) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-tr — KDevelop IDE 用のトルコ語 (tr) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-uk — KDevelop IDE 用のウクライナ語 (uk) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-zhcn — KDevelop IDE 用の簡体字中国語 (zh_CN) 地域化ファイル
- kdevelop-l10n-zhtw — KDevelop IDE 用の繁体字中国語 (zh_TW) 地域化ファイル
- kdoctools — アプリケーション文書にアクセスするさまざまなツール
- kigo — 人気の Go ゲームのオープンソース実装
- llvm-2.7 — Low-Level Virtual Machine (LLVM)
- mailavenger — 高度に設定可能で MTA に依存しない SMTP フィルタサーバ
- marble-plugins — Marble 用のプラグイン
- mongodb-clients — オブジェクト/ドキュメント指向データベース (クライアントアプリケーション)
- mongodb-server — オブジェクト/ドキュメント指向データベース (サーバパッケージ)
- ojs — ジャーナルの管理、出版システム
- olpc-kbdshim — OLPC XO キーボードサポートデーモン
- olpc-powerd — OLPC XO 電源管理サポートデーモン
- opticalraytracer — 仮想的なレンズ設計工場
- php-textile — Textile 記法の PHP パーサ
- plasma-desktop — デスクトップとラップトップコンピュータ用の KDE Plasma ワークスペース
- plasma-netbook — ネットブックコンピュータ用の KDE Plasma ワークスペース
- ploader — Piwigo ギャラリーに写真をアップロードするアプリケーション
- posterazor — 1 枚の画像をポスターに適した複数の画像に分割
- psi-plus-icons — Psi+ 用のアイコン
- psi-plus-skins — Psi+ 用のスキン
- python-django-countries — Django モデルに国フィールドを提供
- python-django-djblets — Django プロジェクトの再利用可能なコンポーネント
- python-django-markupfield — テキストフィールド内で簡単に使えるマークアップ用のカスタム Django フィールド
- python-flask — Werkzeug、Jinja2、善意に基づく極めて小さなウェブフレームワーク
- python-nids — libnids の Python バインディング (いわゆる pynids)
- python-prctl — prctl() システムコールの Python インターフェイス
- python-xklavier — libxklavier の Python バインディング、X キーボード拡張 API
- rabbitvcs-cli — RabbitVCS 用のコマンドラインインターフェイス
- rabbitvcs-gedit — RabbitVCS 用の Gedit 拡張
- rabbitvcs-nautilus — RabbitVCS 用の Nautilus 拡張
- rocs — グラフ理論 IDE
- shiboken — C++ ライブラリ用の CPython バインディング生成器
- skrooge — KDE 用の個人資産管理ソフト
- sylph-searcher — Sylpheed や MH フォルダ用のフルテキスト検索プログラム
- tempest-for-eliza — コンピュータシステムから電磁放射を行う
- torque-client — Torque サーバへのコマンドラインインターフェイス
- torque-client-x11 — GUI の torque クライアント
- torque-scheduler — Torque のスケジューラ部分
- torque-server — PBS から派生したバッチ処理サーバ
- totem-plugin-arte — arte.tv のストリームを視聴する totem プラグイン
- trac-icalviewplugin — チケットクエリの iCalendar フィードを提供
- vala-dbus-binding-tool — xml introspection ファイル用の Vala バインディング生成器
- vowpal-wabbit — 高速で拡張性のあるオンライン学習アルゴリズム
- xul-ext-monkeysphere — ウェブ上の Monkeysphere を利用する Iceweasel/Firefox 拡張
- yorick-mira — Yorick 内で光干渉像を再構成する
作業が必要なパッケージ
現時点で、607 のパッケージがメンテナ不在となり、120 のパッケージがメンテナの引き継ぎを募集中です。興味を惹かれるパッケージがある場合や、支援が必要なパッケージの完全なリストを見るには、最近の報告をご覧ください。
これからも DPN を読みたいですか?
この会報の作成を手伝ってみませんか? 我々は、Debian コミュニティの活動を眺め、何が起きているのかを報告してくれるボランティアのライターを募集しています。貢献に関するページをご覧になって、手助けの具体的な方法をご確認ください。我々はあなたからのメールを debian-publicity@lists.debian.org でお待ちしています。
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バックナンバーもご利用いただけます。
今週号の Debian プロジェクトニュースは Jeremiah C. Foster さん、Alexander Reichle-Schmehl さん が編集しました。
綾小路 龍之介さん が翻訳しました。