Debian GNU/Linux 2.2, The“Joel‘Espy’Klecker”リリース
2000 年 8 月 15 日
Debian プロジェクトは、ここに Debian GNU/Linux オペレーティングシステム の最新版リリースを発表します。このリリースはおよそ 18 ヵ月におよぶ開発期 間と、開発者からエンドユーザまで数千人による広範なテストを経てきました。
Debian GNU/Linux は、フリーな Linux システムです。世界中の約 500 人もの ボランティアたちが、インターネットで協同して開発しています。Debian のフ リーソフトウェアへの貢献、その非営利的な体制、オープンな開発モデルは、 Linux の各種ディストリビューションのなかでもユニークなものとなっていま す。
Power PC と ARM アーキテクチャの追加により、Debian GNU/Linux はいまや 6 種類ものアーキテクチャをサポートしています。これは他のあらゆるディスト リビューションより多いものです。各アーキテクチャ用のパッケージは、同一の ソースパッケージから構築されています。Debian GNU/Linux は iMac や Netwinder 上でも稼働するようになりました。インテルベース PC や Sun SPARC はもちろんのこと、旧型の Macintosh や Amiga のハードウェアも引き続きサ ポートしています。
Debian GNU/Linux 2.2 の特徴は、2.1 と比べて、さらに合理的で洗練されてい るインストーラです。この中には、DHCP 経由での自動的なネットワーク設定機 能、ソフトウェア選択方法の簡素化 ( Debian GNU/Linux をどのように利用する かを選ぶだけです)、X ウィンドウシステムの簡潔な設定ツールなどがありま す。Debian GNU/Linux は、CDから、もしくは、数枚のフロッピとネットワーク 経由によって、インストールすることができます。FTP では http://ftp.debian.org/debian/ と、多くの ミラーサイト より取得できます。そして、もうまもなく、 多くのベンダー から、CD-ROM で利用できるようになるでしょう。 CD イメージ は、今すぐダウンロードできます。
以前のリリースから Debian GNU/Linux 2.2 へのアップグレードは、apt という パッケージ管理ツールを使うことによって自動的におこなわれます。これまでと 同様、Debian GNU/Linux のアップグレードには手間がかからず、場合によって はシステムを停止することすら不要です。Debian GNU/Linux のインストールと アップグレードに関する詳細な説明は、次の URL を参照してください。 リリースノート をご覧ください。
*訳注:日本語サポートの追加パッケージ集である hamm-jp や slink-jp から アップグレードするために、 upgrade ツール を用意しています。この upgrade ツールを利用することで、よりスムーズな移行が可能になります。
Debian GNU/Linux 2.2 は、安定版 Linux カーネルの最新版 (2.2.16) をベース にしており、2.2.17 に組みこまれる予定の Alan Cox によるパッチが適用され ています。2.2 系列のカーネルは、使いやすさと安定性について大幅な改善がな されていて、サポートするハードウェアも新旧ともに増えています。ラップトッ プのユーザであれば、とりわけ PCMCIA サブシステムの改善に気づくことでしょ う。Debian GNU/Linux 2.2 の他の特徴としては、以下のものを代表に、およそ 800 ものパッケージがアップグレードされていることです。
- C Library 2.1.3
- XFree86 3.3.6
- GCC 2.95.2
- GnuPG 1.0.1
- Perl 5.005.03
- Python 1.5.2
- PAM 0.72
- ncurses 5.0
- teTeX 1.0.6
- Emacs 20.7
- XEmacs 21.1.10
- GNOME 1.0.56
※注記 Debian GNU/Linux 2.2 用の GNOME 1.2 パッケージは、 Helix Code のサイトから入手できます。
Debian GNU/Linux 2.2 には、1200 もの新パッケージが追加されました。そのう ちのいくつかを以下に示します。
- postfix 堅固なメール転送エージェント
- openssh 堅固なリモートシェルのフリーな実装
- openldap LDAP クライアントとサーバパッケージ
- w3m テーブル対応の、テキストモードのブラウザ
- gdm GNOME ディスプレイマネージャ
- cvsup CVS 用の効率的なミラーリングシステム
- everybuddy 一体型メッセージングクライアント
- reportbug Debian GNU/Linux バグ報告用ツール
- zope 動的なサイト用のウェブアプリケーションサーバ
- xmms X 用マルチメディアシステム:オーディオプレイヤ
- kaffe フリーで JIT 対応の JAVA コード実行用仮想マシン
- gnapster 有名な MP3 ファイル交換サービス用のインターフェイス
- さいごに、大事なこと。新しいゲームが 56 個
Debian GNU/Linux 2.2 には多種多様なアップグレードや新規ソフトウェアだけ でなく、多くの拡張がなされています。おもなものは、
- 脱着可能な認証モジュール (PAM) の広範な採用。PAM によって、Debian GNU/Linux システムは通常の Unix パスワードの他に、より安全な Shadow や MD5 パスワード、“スマートカード”、使い捨てパスワードなどを使用 するように設定可能となりました。
- 新たなネットワーク設定システム。/etc/network ディレクトリ内で設定作 業をおこなうことにより、マルチホームなホストのサポートが改善されま した。
- Linux ファイルシステム標準構成 (FHS) への一層の追従。混在環境で使用 するための、システム固有、アーキテクチャ固有、非アーキテクチャ固有 のデータの巧みな分離
- 世界中のユーザのより優れたサポート。日本語サポートは、Debian の核と なるアーカイブ内に統合されました。他の非ラテン文字のエンコードも、 幅広い国際化 (I18N) によってサポートされています。欧州各国の言語も また、多岐にわたる上質な翻訳によってサポートしています。
Debian プロジェクトは、特定の分野に特化したディストリビューションのベー スとして利用されることを、つねに望んできました。ここ数年、商用 Linux ディストリビューションのベースとして Debian システムが採用されることによ り、この目的は現実のものとなってきました。 Corel Corporation、 Libra Computer Systems、 Stormix Technologies などの企業が、現在 Debian をベー スとしたディストリビューションを配布しています。それ以外にも、登場間近の ものがあります。さらに、Debian GNU/Linux を収録した CD が各種 Debian 本 の付録になってきました。しかしながら変わらないのは、本プロジェクトがボラ ンティアベースであり、 Debian 社会契約 への献身であり、可能なかぎり最 高のオペレーティングシステムを提供しようとする決意です。Debian GNU/Linux 2.2 は、この目的への重要な一歩となります。
*訳注:国内のディストリビューションでは、オモイカネ (株) が配布している Omoikane GNU/Linux や、 富士マグネディスク (株) が配布している プロサーバ Linux があります。
Debian GNU/Linux 2.2 は、Joel“Espy”Klecker を偲んで、彼に 捧げられて います。Joel は Debian の開発者であり、Debian プロジェクトに携わっている者 の大半がそうとは知らぬまま、Debian に参加していた時間の大半をベッドの上 ですごし、デュシェンヌ型筋ジストロフィーという病と闘いました。 Debian プ ロジェクトは、Joel がはたした貢献の大きさと我々に与えてくれた友情を、今 ようやく痛感しています。それゆえ感謝の証とともに、Joel の感動的な生涯を 偲び、Debian GNU/Linux の本リリースは Joel に捧げられます。